アンチエイジング
抗加齢医学とは
アンチエイジング(抗加齢)医学は長寿を研究する学問で予防医学の実践を兼ねています。老化を制御できる疾患ととらえ,長寿研究を基にさまざまな分野の臨床医学や基礎医学が統合して健康長寿を目指します。老化は80%が環境因子に関与し、遺伝的に規定されているのは20%に過ぎないといわれています。ヒトの平均寿命は年々延びていますが、最高齢者は120歳程度で変化がありません。このため、120歳くらいが種としての寿命と考えられます。平均寿命が延びて健康寿命も延びていますが、まだこの差が大きいのでいかに少なくするかが、抗加齢医学のもう一つの課題です。
1.寿命
多くの生物種にある程度決まった寿命があります。例えば、猫13年、犬15年、カバ40年、シロナガスクジラ80年、ゾウガメ200年などです。ヒトでは60歳ごろまでは老化関連疾患を防ぐことができますが、健康な人でも,最期は衰弱して一生を終えます。
さまざまなストレス、疾患から回復する力は加齢ともに低下します。この低下をコントロールし健康寿命の延伸を目指すのが抗加齢医学です。また、抗加齢医学では種ごとに固有とされている最大寿命を延長することすら可能ではないかと期待されています。
2.老化は病気である
老化は自然現象ですが、生物として規定された遺伝に加えて、環境によって発現する遺伝子は各々異なり、寿命が変化します。この環境変化に伴う遺伝子を制御すれば老化をコントロールすることができると考えられます。すなわち、老化は制御可能であって(早い)老化は疾患であると解釈できます。
老化関連疾患には老化に伴う共通の原因があります。古典的には酸化ストレス、糖化ストレス、慢性炎症です。これらの因子は糖尿病、がん、動脈硬化の発症とも共通する老化メカニズムです。すなわち老化は疾患として考えることができ、積極的に制御すべきと考えられます。さらに最近の研究では、老化には、ゲノムの不安定化、ミトコンドリアの機能不全、幹細胞の枯渇、タンパクの機能不全、オートファジー(細胞内の自食作用)の不全などが細胞の老化、全身の老化に関与しているかが明らかになっています。さらにインスリン様成長因子の発現経路や、mTORの発現経路はがんや糖尿病などの加齢関連疾患の原因として明らかにされています。
3.老化の制御
ミトコンドリアの移植治療や血漿交換療法や胸腺再生が老化を遅らせる可能性が示されています。さらに,メトフォルミン、ラパマイシン、スタチンのような広く使用されている薬剤が健康寿命を延伸できる可能性が検討されています。このように,老化と疾患の共通の分子への介入が健康寿命を延伸させると期待していていいでしょう。運動・栄養・心(脳・睡眠)・環境へ介入することで老化を遅らせ、健康長寿へ導くことができるのです。
4.アンチエイジング医学の臨床
従来の人間ドックに加えて、血管、ホルモンレベル、感覚器の老化度チェック、活性酸素と抗酸化能バランスチェックなど 加齢によって体に生じる様々な変化を調べます。老化という兆候や症状について、検査により早期発見、早期治療、生活指導を行うことによって、加齢、老化の予防を実現することが可能です。老化の兆候を見つけ、徹底的に対処する事で老化をおくらせることができるのです。健康長寿を全うするために、サプリメント指導を含めた食事指導、運動指導、ストレスケアを行うのがアンチエイジング医学です。