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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤ってなーんだ?ー足の静脈がふくらんでコブになる

下肢静脈瘤は足の血管がふくれてこぶの様になる病気です。良性の病気で、初期には特に症状はありません。

進行すると、だるい、むくむといった症状がでてきます。女性の場合、軽くても見た目が気になる方は少なくありません。あしがつる(けいれんを起こす)ことがしばしばありますが、静脈瘤が原因と気づいていない方が多数です。進行すると、湿疹でかゆみが生じたり、足にしみ(色素沈着)が生じてきます。春から夏にかけて静脈瘤に痛みや熱感が生じてきます。重症になると皮膚に傷ができて治らず潰瘍になったり、静脈瘤が破れて出血することがあります。    

また、静脈瘤には血液が溜まっているだけで流れがないので血液が固まってしまうことがあります。血液の固まりの血栓は炎症を引き起こします。静脈瘤が熱をもって赤くなり痛みを生じます。一旦できてしまった血栓が治まってもしみ(炎症後色素沈着)が残ります。下肢静脈瘤は自然に治ることはなく、時間とともゆっくりと進行していきます。

下肢の静脈には逆流防止弁がある

血液は心臓から動脈を通って組織に向かい、組織からは静脈を通って心臓にもどります。立っていると足では、動脈の血液の流れは下向きにで、静脈の血液の流れは上向きになります。重力に逆らって血液が上向きに流れ、逆流しないように足の静脈には開いたり閉じたりする弁というしくみがあり、血液の流れを一方向に保っています。いわば逆流防止弁です。

下肢静脈瘤はどうしてできるの?

下肢の静脈には弁がたくさんあります。足の付け根の静脈弁が壊れて閉じきらなくなると逆流が生じます。静脈の圧力が上がり、静脈は太くなります。心臓からの落差分だけの静脈圧がかかるうえに、静脈が太くなって弁も閉じ切らなくなり、逆流が生じます。血液逆流する弁不全が上から順に次々と生じてしまい、ももの付け根からふくらはぎに至るまで逆流するようになります。もともとは見えないほど細かった静脈は高い圧力にさらされて、徐々に太くなっていきます。こぶのように太くなると外からみてわかるようになり、静脈瘤と呼ばれます。静脈瘤が外からはっきりわかるほど拡張するのには長い時間がかかります。

筋肉ポンプ(第二の心臓)

下肢で血液が下から上に向かって昇っていくとは不思議です。静脈は筋肉の収縮に伴い揉み上げられて、血液は心臓に向かって昇っていきます。筋肉ポンプといいます。筋肉がゆるんだとき、上がった血液が重力によって落下しないように静脈弁が閉じ、逆流を防止します。下肢の血液は主に下腿の筋肉によって駆出され、第二の心臓と呼ばれます。運動して足の筋肉が動いていると足の血液は勢いよく循環して、心臓に戻っていきます。ただ立っているとき、椅子に座っているだけのときには、この筋肉ポンプが働かず静脈に血液が溜まってしまいます。すなわち、足がむくんで太くなります。また、静脈は太くなって弁が閉じ切らなくなるので弁不全すなわち静脈瘤の原因になります。

静脈瘤になりやすい人はだーれ?

立ち仕事の人はなりやすいです。ただ立っているだけのときは筋肉ポンプが働かず、静脈に血液が溜まって太くなるからです。経験的に男性ではラーメン屋さん、女性では美容師さんが典型的な静脈瘤になりやすい職業です。年齢とともに発症の頻度は増えますが、子供でも静脈瘤は発生します。遺伝的な要因もあり、母娘で静脈瘤という方はまれではありません。女性では妊娠や出産を契機に静脈瘤を発症することがあります。男性は女性の半分程度の頻度で下肢静脈瘤が生じます。ただし、重症のうっ帯性潰瘍は男性の方が多くみられます。

静脈瘤になるとどうなるの?

血液は動脈で行って静脈で戻って循環です。静脈瘤の方は血液が行ったきりで戻って来ない、循環が悪い状態です。本来心臓に戻り肺できれいにされるはずの汚い血液が足に溜まってしまっていて、血液の鬱滞(うったい)といいます。このためさまざまな症状がおきてきます。

足の重さ・だるさは比較的初期から起きる症状です。悪い汚い血液が足に溜まってしまっているために生じます。夜間寝ている間には血液の溜まりは解消されるので、朝は足の症状はなくすっきりとしています。日中血液が徐々に溜まっていくので夕方から夜にかけて重さ・だるさは強くなっていきます。

足のこむら返りは足の筋肉のけいれんで、健康な人でも激しい運動の後に時々経験します。そのため、静脈瘤の症状だと思っていない方が多いのですが、静脈瘤が原因でよくおこる症状です。明け方ふとんの中でおこるのが特徴的で、静脈瘤が軽症から少し悪くなる頃に起こりやすいです。

足のむくみは静脈瘤で比較的多い症状です。指で押すとひっこんだまま戻らない、靴下の跡がつく、靴がきつくなることがあります。足のむくみは内蔵の病気やリンパの病気でも起こります。しかし、むくみの原因は下肢静脈瘤以外では長時間の立ち仕事や座り仕事、1日座って過ごす場合に起きる廃用性の浮腫、加齢、によるものがほとんどです。

足のかゆみ・皮膚炎は静脈瘤がある程度進行した方におきてきます。皮膚が赤くなり、かさかさしたり皮がむけたりします。次第に色素沈着がおきて黒ずんできます。血液が足にたまってしまう鬱滞(うったい)が原因です。老廃物の多い静脈血が皮膚にたまって循環が悪くなり炎症をおこすことで生じま。皮膚科に受診して軟膏を塗ってもなかなか治らない足のかゆみや湿疹は静脈瘤が原因のことがあります。

色素沈着・潰瘍は静脈瘤が進行した状態で起きてきます。鬱滞(うったい)性皮膚炎が先に起こります。皮膚の炎症が長く続くと皮膚の毛細血管が壊れてしまい、血液の成分が皮膚の組織に染み出します。赤血球の成分のヘモグロビンが皮膚に漏出するとヘモジデリンに変化します。色素沈着はヘモジデリンの沈着によるもので、どす黒い色のもとはヘモジデリンに含まれる鉄の色です。さらに進行すると傷ができて治らず皮膚に穴が開いた状態になります。皮膚の潰瘍といいます。毛細血管が詰まってしまい血液がもはや循環できない状態になり、皮膚が死んでしまうのです。一旦皮膚に鬱滞性の潰瘍ができてしまうと難治です。肥満の方に多く生じます。肥満の人では、脂肪組織により皮下組織のリンパ管が圧迫されてリンパの流れが滞ってしまい、リンパの鬱滞も起こります。このため、静脈とリンパの両方の流れが悪くなるため起こりやすいのです。

血栓性静脈炎は静脈瘤の中の血液が固まってしまい、血栓ができて起こります。血栓は強い炎症を伴います。このため、静脈瘤が赤みと熱をもって強い痛みが生じます。数か月の自然経過で次第に炎症は収まってきます。この間は鎮痛剤や外用薬で対処します。痛みがあまりに強いときは静脈瘤を切開して血栓を取り出してしまう処置を行います。

出血は静脈瘤は血管の壁が薄く延びてしまってもろくなって起こります。通常は静脈瘤が破裂しても皮膚の下にとどまって内出血で収まります。静脈瘤がもろい人は外傷がなくても気づかないうちに内出血を繰り返します。皮膚に潰瘍がある場合や、なくてもまれには静脈瘤が破れて外に出血することがあります。外に出血した場合、あわてて走り回ると余計に出血して大量出血を来すことになります。あわてず、仰向けに寝て足を挙げて出血部位を圧迫してください。やがて出血は止まります。

静脈瘤には種類がある

下肢静脈瘤は血管が太くなって盛り上がってみえる伏在型静脈瘤があります。ほとんどの場合、伏在静脈の逆流が原因で生じます。時間とともに静脈瘤は大きくなり、静脈の鬱滞の程度に応じて症状が出現してきます。このタイプは進行して鬱滞の症状が生じてきた場合、手術による治療が必要になります。細い静脈の分枝が拡張した”分枝型静脈瘤”、赤い血管がクモの巣のように広がった”くもの巣状静脈瘤”、青い静脈が網目状に拡張した”網状静脈瘤”は痩せた、肌の白い方では目立ちます。これらの細い静脈瘤の場合、足の循環が特に悪いわけではありませんが、見た目を気にする方は注射でつぶしてしまう硬化療法によって治療することができます。

どうやって治すの?

圧迫療法

 初期で症状がないときは特に治療は必要ありません。足がだるい、重いという症状のある方は弾力ストッキングによる圧迫療法が有効です。静脈瘤がない方でも一日寝て過ごすことはなく、重力の影響で血液やリンパ液は足にたまってうっ滞を起こします。下肢を圧迫することによりうっ滞を防ぐことができるので足が細く、楽になります。足を圧迫することにより足の周径は細くなり、静脈も細くなります。血管が細いと太い場合に比べて静脈やリンパの弁の閉鎖がよくなり、うっ滞が改善します。また、血流速度が速くなり血栓を予防する効果もあります。弾力ストッキングは履くのに慣れが必要です。力がなくて上手に履けない方は弾力包帯で下肢を巻くことも同様の効果があります。

 硬化療法は、刺激性の薬剤を静脈瘤内に注入し、静脈を閉塞させる(ふさぐ)方法です。主に細い静脈瘤に対して実施され、外来で行うことができます。

小さな静脈瘤は硬化療法で治療できます

細い網目のような網状静脈瘤、赤いくもの巣のようなくもの巣状静脈瘤、細い静脈が拡張した分枝状静脈瘤には硬化療法を行います。注射で細い静脈瘤に硬化剤を注入します。静脈瘤は弾力ストッキングで圧迫すると固まってなくなります。細い静脈瘤にお薬を入れるのは熟練が必要で、すべての静脈瘤を硬めるのは難しいですが、目立つ静脈瘤を減らすことができます。

硬化療法前

硬化療法後

また、切除後残った静脈瘤にも硬化療法を行うことができます。

手術療法

症状が強い場合には手術を行います。静脈瘤の原因は静脈の弁不全と静脈の逆流です。静脈が弁不全に陥ってしまうと、静脈が血液を逆向きに通してしまうので、逆流を止めることが必要です。もはや逆流を起こす静脈は足の循環に悪さをするだけになっています。逆流を止める手術の術式は、大きく分けて4つあります。

1.ストリッピング手術

逆流のある表在静脈をワイヤーを入れて引っこ抜いてしまいます。100年前に考案されたバブコック法ではワイヤの先端に弾丸ヘッドのような頭をつけて周囲組織ごと静脈を引っこ抜きます。神経損傷や出血が多いのが難点です。その後、静脈を内翻して抜去する方法が考案されました。薄めた局所麻酔薬を大量に静脈の周囲に打つことで静脈が周囲の組織から剥離されるので出血が少なく、神経損傷も少なくて済みます。局所麻酔のみでも手術は可能ですが、軽く鎮静剤を使用すると苦痛はほとんどありません。ストリッピング手術は根治性にすぐれた方法ですが、血管内治療が普及してからはあまり施行されなくなりました。(画像は下肢静脈瘤.netより)

2.高位結紮術

逆流する静脈のなるべく中枢部位で縛ってしまう方法です。静脈が1本のパイプであれば結紮によって逆流は止まるはずです。実際には静脈は1本のパイプではなく多数の分枝があり、場合によってはあみだくじのようにつながっています。そのため、1か所の結紮のみで逆流を止めることは難しくまた、せっかく結紮した静脈が再疎通することもあるので最近ではあまり行われなくなりました。

3.血管内焼灼術

カテーテルを逆流する静脈の末梢側からいれてカテーテル先端の熱で静脈を焼いて流れを止めてしまう方法です。レーザーによる方法と高周波による方法があります。タンパク質は熱を加えると縮んで固く変性します。肉を焼くと縮んで固くなるのと同じです。血管の一番内側にある内皮細胞も障害されて血液が固まりやすくなります。高い熱が必要で血管の周囲組織に熱による障害が生じないように、局所麻酔薬を薄めて焼灼する静脈の周りに注入して熱が血管の周囲に影響が及ぼさないようにします。従来のストリッピング手術に比較すると体への負担が少なく低侵襲です。焼灼は伏在静脈の起始部より少し離す必要があるのでストリッピング手術と比較すると伏在静脈の分枝の処理ができない分再発が多くると考えられます。ただし、術後1年では再発率、治療効果には差がないのでストリッピング手術に取って変わった手術といえます。当院では安定して焼灼できる高周波による焼灼術を行っています。

4.血管内塞栓術

カテーテルを用いて逆流のある静脈にグルーといわれる物質を注入して血管を固めてしまう方法です。グルーは接着剤で水分と接すると固まる性質があります。固まるまでの時間は添加物により調整されていて、深部静脈に流れにくいようになっています。成績は焼灼術と同等です。塞栓物質を注入するのに静脈周囲に麻酔を打つ必要がないので簡便で短時間で手術が終わります。手術の成績はストリッピング手術や焼灼術とそん色がないとされています。グルーはいつまでも血管内に残るので、グルーに対するアレルギーが生じた場合、静脈ごと切除する必要があります。その頻度は0.01%程度です。当院では、アレルギーのない、比較的高齢の方に塞栓術を施行しています。

焼灼術塞栓術で原因となる静脈の逆流を止めると、ふくれていた静脈瘤は小さくなります。3-6か月するとかなり小さくなるので後日、気になる静脈瘤を注射で固める硬化療法を行います。ぼこぼこにふくれてしまった大きな静脈瘤はなくなることはないので焼灼または塞栓術のとき、目立つ静脈瘤は取ってしまいます。取るといっても1か所につき傷は2-3㎜と小さくて縫う必要がありません。傷はテープでとめてくっつけます。

手術を受けた方がいいですか?

静脈瘤は良性の病気で初期ではとくに症状はなく、治療の必要はありません。足が重い、だるいなどの症状が出現したら圧迫療法以外に手術が考慮されます。外見が気になる場合にも手術がいいでしょう。皮膚炎を起こして色素沈着がある場合、血栓性静脈炎を起こした場合は、皮膚のうっ帯性潰瘍がある場合は手術適応になります。また、静脈瘤はゆっくりですが進行性で少しずつ悪化していきますので若年の方は症状が軽度でも手術を考慮した方がいいでしょう。

エコノミークラス症候群になりますか?

下肢の深いところに位置する深部静脈に血栓ができる深部静脈血栓症は、エコノミークラス症候群とも呼ばれます。深部静脈の血栓がはがれると肺に飛んで肺梗塞を起こしたり、まれに心臓の穴を通って脳に飛んで脳梗塞を引き起こし致命的になりえます。熊本の震災の際、車中泊をした方の中で、肺塞栓症により亡くなった方がありました。下肢静脈瘤は深部静脈血栓症を発症する2-5倍程度の危険因子とされています。ただし、下肢静脈瘤があるからといって必ず深部静脈血栓症になるわけではありません。深部静脈血栓症や肺塞栓を予防する目的では手術はすすめられませんが、長時間の坐位や立位が強いられる場合には、弾力ストッキングによる圧迫は必要と思います。

下肢静脈瘤と腰痛はヒトが二本足歩行を獲得した宿命

進化の過程でヒトは約600万年前に二本足歩行を獲得しました。しかも、直立での2本足歩行で手が自由に使え、重い荷物を運ぶことができます。かつては4本足歩行であったため、ヒトの体では体幹の静脈には逆流防止弁がありません。4本足歩行の場合、心臓と足の付け根はほぼ同じ高さで血液が逆流しないからです。立ち上がって歩行するようになっても、体幹部には逆流防止弁がないままで心臓との落差分の圧力が足の付け根の静脈圧がかかります。身長170㎝の人で約50cmmH2O=36mmHg の圧力です。この圧力が常にももの付け根にある下肢の最初の静脈弁にかかるので壊れやすいわけです。一旦一番上の静脈弁に逆流が生じると、静脈が拡張して弁が閉じにくくなるうえ下の静脈弁にも圧力がかかり弁不全が生じやすくなります。このようにして次々と静脈弁の不全が生じて逆流が大腿から下腿まで及び静脈瘤ができてきます。直立二本足の場合、脊柱にも大変な力が加わるので変形したり、痛みが生じやすいわけです。このように、二本足歩行に進化して生物としては有利な反面、不都合な病気にもなりやすくなりました。

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