みんながかかる病気
高尿酸血症(痛風)
メタボリックシンドロームと関連して最近若い人の間でも増えているのが高尿酸血症です。尿酸があまり多いと関節で結晶になって、激痛を伴う関節炎が起こります。痛みは激烈で、風が吹くだけで痛むことから、痛風と呼ばれます。高尿酸血症は痛風発作が起こるまで自分では何ともないので厄介です。
痛風はかつては、酒飲みの病気、おいしいものばかりを食べている社長さんのぜいたく病といわれていました。今では普通の人が普通に食べている食事がかつてのぜいたくに匹敵するほど高栄養になってしまいました。そのため、高尿酸血症は普通の人がかかる病気になってしまったのです。
血液の中で増えた尿酸は全身を巡ります。関節で徐々に結晶になって溜まっていきますが、溜まっただけでは特に症状はありません。運動や何かの拍子に結晶が剥がれ落ちると免疫細胞が異物として処理しようとして炎症を起こします。これが痛風発作です。高尿酸血症の患者は痛風発作が起きる可能性がありますが、全員というわけではありません。通常痛みは一週間くらいで治まりますが、高尿酸血症を治療しないと発作を繰り返します。
肝臓でプリン体が代謝されて尿酸が作られ、尿から排出されます。プリン体は細胞の核の成分とエネルギーのもとであるATP(アデノシン三リン酸)から作られます。アルコールは代謝される際にATPを過剰に消費し、尿酸が生成されます。
恐ろしいのは痛みだけではありません。長期間高尿酸血症が持続すると尿酸がどんどん関節内に溜まって、関節そのものが変形していきます。尿酸が析出してできる尿酸結節は、皮膚にもできることがあります。
尿路にカルシウムとともに尿酸が析出すると、尿路結石ができることがあります。知らず知らずのうちに、腎臓に尿酸が溜まっていくと徐々に腎機能が低下していきます。尿酸そのものも血管内皮を障害したり、酸化作用があって腎組織を障害していきます。最後には腎機能が廃絶し、血液透析が必要になることもあります。高尿酸血症はメタボリックシンドロームと関連し、血管病の発症率が高くなるので、動脈硬化のリスクマーカーと呼ばれます。
高尿酸血症治療の基本は食生活の改善です。プリン体を多く含む食品(レバー、肉、魚の干物、たらこ・いくらなど魚の卵など)を控えることです。プリン体はあらゆる食品に含まれるので、食べすぎは高尿酸血症の原因になります。特に夕食に一日の大半のカロリーを摂取することは尿酸値を上げます。ビールにプリン体が含まれていることはよく知られていますが、他のアルコールも過剰に摂取すればATPを消費して尿酸値を上昇させます。乳製品、特に牛乳、ヨーグルトは尿酸排泄を促進、尿酸値を低下させるとされていて、特に制限はありません。水分を多くとると、尿中に尿酸が排出されて血液中の尿酸は低下します。