みんながかかる病気
脂肪肝

カロリーが余って作られる脂肪は、脂肪組織以外の臓器に沈着することがあります。肝臓にたくさんの脂肪が沈着すると脂肪肝といわれます。内臓肥満と合併しやすく、肝臓が肥満している状態ともいえます。肝臓は無言の臓器といわれ、多少痛んでも特に自覚症状は現れません。脂肪肝では特に何ともない人がほとんどです。脂肪肝は、アルコール多飲が原因のアルコール性脂肪肝がよく知られています。アルコールをたくさん飲まない人でも過食が原因で脂肪肝になります。肝臓は糖や脂肪などの物質代謝を行う重要な臓器です。内臓脂肪はメタボリックシンドロームの発症に中心的な役割があり、脂肪肝の発症にも関係します。また、脂肪肝そのものも動脈硬化の進行を加速させます。
アルコールを飲まない人で主に過食を原因として起こる脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝(NAFLD:non alchoholic fatty liver disease)といいます。この非アルコール性脂肪肝のうち肝炎を生じたものを非アルコール性脂肪性肝炎NASH(non alchoholic stenohepatitis)といいます。脂肪肝のうち肝炎に至るのは一〇パーセントくらいとされ、肝炎は肝硬変、肝臓がんに進行すると命に関わってきます。
脂肪肝は糖尿病の原因になる
脂肪肝のうち二〇パーセント弱は糖尿病を合併します。脂肪肝が改善した方では糖尿病は数パーセントに減少することから、脂肪肝そのものが糖尿病の原因になると考えられています。肝臓からはへパトサイトカインと呼ばれるホルモンが分泌されます。脂肪肝ではこのへパトサイトカインの分泌異常が生じて、インスリン抵抗性を生じて糖尿病の原因になると想定されています。
脂肪毒性
脂肪は脂肪酸とグリセロールからできています。脂肪酸はエネルギー源であるとともに、さまざまなシグナル伝達を行います。過剰な遊離脂肪酸は、インスリンの働きを弱め、脂肪毒性と呼ばれます。また、膵臓では過剰な脂肪酸が膵臓に働いてインスリン分泌を弱めてしまいます。また、脂肪酸は血管内皮で過剰な酸素を作り、酸化ストレスを増加させて内皮機能を低下させます。すなわち、動脈硬化を促進してしまうのです。このことを特に血管脂肪毒性と呼ぶことがあります。肝臓に脂肪が沈着するほど過剰に脂肪があることは、血管にも負担をかけていると考えるとわかりやすいでしょう。そもそも肝臓は類洞という豊富な毛細血管からできている臓器です。メタボリックシンドロームによる糖や脂質など血中代謝物質の異常な増加により、毛細血管は傷みやすく、肝臓は影響を受けやすいといえます。
診断は超音波検査やCTなどの画像検査や血液検査で脂肪肝が認められ、ほかの肝臓病ではないことが確認されれば診断されます。血液検査だけでは肝臓に脂肪がついているかどうかは確定できないので、腹部超音波検査やCTによる画像検査が必要です。さらに肝炎や肝の繊維化を起こしているかどうかは精密検査が必要です。肝臓の組織を調べる肝生検や、超音波を用いた肝臓の硬さと肝臓組織内の脂肪量を測定するフィブロスキャン検査で診断することができます。
今のところ、脂肪肝に特に有効なお薬はないので食生活の改善が何よりも大事です。地中海式ダイエットは、オリーブオイル、野菜、魚介類を中心として、豊富な植物繊維質と一部の不飽和脂肪酸を取り入れる健康的な食事です。脂質異常やインスリン抵抗性、肝脂肪化の改善に効果が認められています。
運動をすると筋肉で消費エネルギー増加の効果と、筋繊維の肥大による基礎代謝量の増加が起きます。筋肉からはマイオカインというホルモンが分泌され、その中に糖や脂質の代謝をよくしたり、膵臓でインスリン分泌を高めるものが分泌されます。定期的に運動して肥満を改善して、血糖、脂質、血圧を管理しましょう。