みんながかかる病気
認知症
認知症は、大きく分けて血管型認知症とアルツハイマー型認知症の二種類があります。血管性認知症は脳梗塞、脳出血といった脳卒中により脳の障害が生じ、その結果障害を受けた部位の失われた機能に応じて症状が異なります。脳卒中により認知機能が障害されて生じた認知症が血管性認知症です。脳卒中は繰り返し起こることがまれではありません。脳卒中が繰り返されると認知機能が下り階段のように低下していきます。
症状は、障害を受けた脳の場所によって、認知症以外に、手足の麻痺、言語の障害、飲み込みの障害など、さまざまな症状がみられます。脳卒中は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や心臓の病気などが原因で生じる血管病の一種です。
アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドタンパクが蓄積し、タウたんぱくが蓄積して神経線維が壊死して起こります。脳内で記憶を形成するのに必要不可欠な、海馬と呼ばれる構造体に広がります。ニューロンがさらに死滅するにつれて、影響を受けた脳領域は萎縮し始めます。アルツハイマー病の後期までに障害は広範囲に及び、脳組織は著しく萎縮します。脳の血行障害が起こると進行が早くなることがわかっています。
認知症の約半分の原因を占めるアルツハイマー型認知症の原因は、はっきりわかっているわけではありません。アルツハイマー病では、脳内で発生する酸化ストレス、糖化ストレスや炎症が、病態を悪化させることが知られてきました。これらは細胞に障害を与えるという意味では、あらゆる老化現象の原因であるといってよいでしょう。
予防法
1.生活習慣病を予防・治療する
血管性認知症やアルツハイマー型認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣の乱れからくる病気に起因することも多いもの。そのため生活習慣病の予防や治療をすることは、上記の認知症予防にもつながります。
2.運動する
運動は脳が刺激されて認知機能が向上するため、認知症予防につながることが多くの研究で明らかになっています。運動を習慣付けて、日頃から適度に身体を動かすことが大切です。
3.達成感を味わう
日常生活の中で、楽しさや達成感を味わうことも認知症予防に効果的。本人の気持ちも前向きになるでしょう。たとえば料理を作ったり、写真を撮ったり、日記を書いたりして後から振り返れるよう形にするのもいいでしょう。
4.他人と交流する
他者とのコミュニケーションも認知症予防に有効です。脳を刺激するほか、気持ちにも豊かさをもたらします。家族との会話、ご近所や自治会の交流、共同作業を行うなどの機会をもち、参加しつづけることが大切です。
5.ご本人が望んで生活に取り入れる
認知症予防で重要なのは、本人が無理なく楽しみながら継続できることです。ガーデニングやウォーキングなど本人の趣味を生活に取り入れて、習慣化できる環境を整えてあげましょう。
認知症予防の10か条
- 1. 塩分と動物性脂肪を摂りすぎないバランスのよい食事を
- 2. 適度に運動を行い足腰を丈夫に
- 3. 深酒とタバコは減らし規則正しい生活を
- 4. 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
- 5. 転倒に気をつけよう!頭の打撲は認知症を招くことも
- 6. 何事もに興味と好奇心をもつように
- 7. 考えをまとめて表現する習慣を
- 8. こまやかな気配りをしたよい付き合いを
- 9. いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
- 10. くよくよしないで明るい気分で生活を
薬物療法
認知症の中核症状に対しては、抗認知症薬による治療を行います。
現在日本で使用されている認知症の薬は4種あり、大きくふたつに分類されます。 神経伝達物質の減少を抑え、スムーズな情報伝達を助ける「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」と、カルシウムイオンが脳神経細胞に過剰に流入するのを防ぎ、情報伝達を整える「NMDA受容体拮抗薬」です。
アリセプト(ドネペジル塩酸塩)、レミニール(ガランタミン臭化水素塩酸)、リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ(バスチグミン)は「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」に分類されます。
「NMDA受容体拮抗薬」のメマリー(メマンチン塩酸塩)は、上記の3剤とは異なる働きを持ち、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬と併用して治療を行うこともあります。
この4種は主にアルツハイマー型認知症に処方されますが、アリセプトに代表されるドネペジル塩酸塩については、レビー小体型認知症の治療にも使用されています。
行動・心理症状(BPSD)を改善するために、薬による治療を行います。
抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬などの向精神薬のほか、漢方製剤が使われることもあります。
不安や幻覚・妄想、せん妄、徘徊については、抗精神病薬や、双極性障害治療薬。興奮には抗精神病薬のほか、抑肝酸という漢方製剤が処方されることがあります。また、うつ状態や性的逸脱行為などにはSSRI、SNRIなどの抗うつ薬、睡眠障害には睡眠薬などが使用されます。
いずれも副作用の症状に気をつけながら、医師・薬剤師のアドバイスに従って正しく服用することが大切です。